[検体採取について]

サンプルはどのようなものがどのくらいあればよいですか?

▲尿沈渣、破砕性カテーテル法で採取した検体の遠心物などが利用できます。

▲いずれも細胞が数万個~あれば正確な検査が可能です。スピッツ管で作成した尿沈渣であれば1mm厚程度あれば十分ですが、検査依頼前に一部の検体を塗沫・鏡検し十分量の細胞が含まれていること(肉眼・低倍率でも細胞集塊の十分な広がりを確認できる程度)を確認しておくことを強くお勧めします。

検体の保存はどのようにすればよいですか?

▲液体検体(尿沈渣・前立腺マッサージ液)の場合は、遠心し上清を捨てて沈渣だけにして、冷凍保存/発送してください。腫瘍組 織の場合はそのまま冷凍保存/発送してください。

▲沈渣は密閉性の高いスクリューキャップチューブまたはエッペンチューブに入れて送付してください。スピッツ管はもれる ことがあるので、送付には使用しないでください。

尿全体を冷凍しても検査はできますか?

▲基本的には不可能です。尿中に核酸が漏出し、十分な濃度の検体が得られなくなります。

検体が不十分であった場合、途中で連絡をいただけますか?

▲残念ながらできません。Digital PCR検査の性質上、最終段階になってから検体量が十分であったか確定するためです。そのため検体中に十分な細胞が存在するかどうかを検査依頼前に確認することが重要です。

猫の検査もできますか?

▲猫では本遺伝子変異は報告されておらず、検査はできません。

細菌感染が あっても、検査できますか?

▲Digital PCRは非常に感度の高い方法です。ある程度の細菌の混入であれば問題なく検査を行うことできます。

▲菌数が著しく多いために細胞の含まれる率が下がってしまう場合や膿様になり細胞成分が変性してしまっている場合などに ついては正しい結果が得られない場合もあります。

 

[検査結果について]

検査結果が陽性でした。どのように考えればよいですか?

▲移行上皮癌もしくは前立腺癌である可能性が極めて高いです。これまでの報告ではBRAF遺伝子変異が陽性であって、良性疾患であった症例は存在しません。しかし、まだ症例数の蓄積が少ない新規の検査法であるため、今後例外的な症例が発見される可能性があります。したがってその他の臨床検査所見と合わせて最終的にはご判断ください。

検査結果が陰性でした。どのように考えればよいですか?

▲悪性腫瘍を含め全ての疾患(もしくは正常)の可能性があります。これはBRAF遺伝子に変異を持たない移行上皮癌や前立腺癌も20~30%存在するためです。その他の臨床検査所見と合わせて判断してください。

検査結果が検体不足でした。どのようにすればよいですか?

▲検体中に十分な細胞がいなかったということを意味しています。肉眼的な沈渣中に含まれていた成分が多量の結石であったケースなどが考えられます。これらは検査前に一部を塗沫・鏡検することで回避できます。また通常の採尿では細胞数が少なすぎる場合は、生理食塩水で膀胱内を複数回潅流する、破砕性カテーテル法を追加する等の方法で検体量を増やすことができます。

報告書に記載された「変異遺伝子の割合」にはどのような意味がありますか?

▲一般的に腫瘍細胞が多く含まれていると高く、強い感染等を伴い炎症細胞が重度に存在する場合には低くなります。0.15%以上であればどちらも陽性には変わりません。結果を同時に実施した細胞診と照らし合わせることで、検査結果間の比較をすることができます。

報告書に記載された「解析遺伝子数」にはどのような意味がありますか?

▲Digital PCR法の感度と特異度を十分に保つためには2,000-20,000の遺伝子が解析されることが望ましいと考えられます。ただしそれ以外の場合であっても、検体の内容次第(例えば検体中の細胞数は200個しかなかったが明らかに変異遺伝子が存在している)では、検査結果に結びつく場合もありますので、報告書の結果やコメントを参照してください。

BRAF遺伝子変異陽性の場合にはc-KIT変異に対するイマチニブ/トセラニブのような分子標的薬があるのでしょうか?

▲現在獣医領域でBRAF遺伝子変異腫瘍に対して有効と考えられる薬剤の報告はありません。ヒトのBRAF遺伝子変異腫瘍に対しては分子標的薬が複数認可されていますが、これらが犬のBRAF変異腫瘍に効果があるかどうかに関しては全く情報はありません。