固定について

病理検査の基本は固定から。
適確な病理診断を行う為には、適切な標本作りが欠かせません。その鍵を握るのは検体を採取した後の固定です。

検体は生体から切り離された(酸素及び栄養の補給を絶たれた)瞬間から変性が始まります。いち早く生命活動を停止させると共にその状態を形態的に維持するのが、固定です。
適切な固定液の選択と量、固定時間が病理診断には重要です。

 

汎用固定液

病理検査(診断)に用いられる一般的な固定液は10%ホルマリンです。
局方ホルマリンを100として、10分の1に水道水で薄めた(10倍希釈)固定液を10%ホルマリンと称します。
局方ホルマリンのホルムアルデヒド濃度は35~37%の為、10%ホルマリンといっても、ホルムアルデヒド濃度は4%以下です。

希釈する溶媒にリン酸緩衝液を用いた場合、10%緩衝ホルマリンと称します。
ホルマリンは自然酸化により蟻酸を生じ酸性となる為、時間と共に本来の固定(及び殺菌)効果が妨げられます。局方ホルマリンには酸化防止の為、少量のメタノールが含まれていますが、不充分な為に緩衝液を使用します。

酵素などの特殊な検索を行う場合には、メタノールが反応阻害を起こす為、純粋なホルムアルデヒド水溶液を使用する事もあります。
ホルムアルデヒドの重合体のパラホルムアルデヒド(固体)を、水または緩衝液に溶かした固定液をパラホルムアルデヒド固定液と称します。通常使用する濃度は10%ホルマリンになぞられて4%です。
必要に応じて作成し(保管は冷暗所)、2週間以内に使い切ります。

 

液状検体処理

体腔液、貯留液

直接塗抹標本と沈済塗抹標本の両方を作成してください。
沈済は通常1000~2000 rpm 5分の遠心条件にて遠心を行います。
上清を捨て、沈渣をスライドガラスに塗抹(引きガラス法、すりあわせ法、等々)し、冷風ドライヤーを用いて速やかに乾燥させます。
残す上清の量は、沈渣の量により調整します。
出血が多い場合には沈渣の上層部のみを上清に浮遊させ、塗抹を行います。
スライドガラスの方端を1cm以上空けて塗抹してください。
凝固を防ぐ為に、ヘパリンで注射筒内を濡らしてから採取する事をお勧めします。
沈渣に凝固塊(血餅では無い)がある場合には、凝固塊を充分つぶしながら細胞成分を剥離させるようにしてください。